フォーラムのフォーラム

富山・大福寺手仕事フォーラム

第8回手仕事フォーラムは、富山県南砺市の大福寺「不二門」の落慶を祝い、2004年12月11、12日に大福寺で開催しました。

「不二門」落慶法要/11日(土)

落慶法要に先立ち、「不二門」の建立を企図しながらその半ばで他界した大福寺前住職の一周忌法要が行なわれ、その後、大福寺山門「不二門」の落慶法要が営まれました。
門の安置仏、釈迦如来の開眼が行なわれて不二門は落成。続いて不二門落成に至る関係者に大福寺住職から感謝状が授与され、その後本堂で、落慶法要のクライマックスともいうべき声明が執り行われました。
本堂には、浄土真宗大谷派の城端別院善徳寺をはじめ近隣の僧侶三十名ほどが参列し、地元の雅楽保存会の方々がその脇に陣取ります。そして近隣の各家々から老若男女が参集して本堂を埋め尽くすなかで、雅楽の優雅な調べとともに僧侶があらん限りの声を振り絞っての大音声。これが真宗大谷派の、なかでもこの地域独特の声明だといいます。それは荘厳と気迫が相乗して心身に共鳴する感動的な声明でした。
 法要を終え、本堂の前庭では地元保存会の方々が「ちょんがれ」を披露。落成したばかりの不二門を背景に、おどけた衣裳をまとった踊り手立ちが伝統の盆踊りを舞い、不二門の落慶を祝う会を締めくくりました。

落慶法要の僧侶

釈迦如来の開眼供養


落慶法要で挨拶する
フォーラム代表の久野恵一


本堂で行なわれた声明

「ちょんがれ」

「ちょんがれを」披露する保存会の方々

 

手仕事フォーラム公開講座「不二門を観る会」/12日(日)

不二門の移築再建に関わった手仕事フォーラムメンバーが、不二門を前でそれぞれの思いを語りました。

不二門」正面

「不二門」を移転再建した棟梁(中央)と
解体を担当した埼玉県の棟梁(右)

■大福寺住職/太田浩史

 

 不二門は、父・太田利雄が、道路拡張で取り壊される埼玉県川口市の長屋門を移築しようと、佐々木棟梁に相談して始まった事業です。ところが、父は昨年12月11日に心臓発作で急逝。その葬儀で私たちは、父の遺志を継いで一周忌までにこの門を建てようと決意したのです。
 ありがたいことに、土地の人々、全国の方々の寄付があり、佐々木棟梁の技術と手仕事フォーラムの感性が合わさってこのような素晴らしい門が出来上がりました。私はこの門の姿に父の面影を感じるのですが、これは皆さんの力によって父の願いが姿となって現れたものだと思い、感謝しております。

■宮大工棟梁/佐々木利幸

 

 移築は正直難しいです。しかし、先代の住職の熱い想いを形にしたい、そう思って取り組みました。
 この門は、柱の大きさと本数、その構造には全く手をつけていません。屋根は北陸では瓦屋根が常識ですが、屋根の重みを軽減し雪の重さに耐えられるように、また、もともと茅葺だったのでより近いイメージにするため銅版葺きにしました。極端すぎると思える屋根の反りは、室町時代の社寺建築以前の屋根の形にしました。不二門の屋根は二層で珍しいと言われますが、東本願寺も屋根が二層です。
 三方山に囲まれたこの地で、その山の雄大さと同じようにそびえ立つ門になったと思います。極楽浄土に住む美しい鳥「迦陵頻伽」のように大きな翼を広げて僕たちを迎えてくれる……先代の熱い想いをこの門に込めて形にすることができたと思っています。


「不二門」特徴的な屋根の反り

「不二門」背面 本堂側から

■建築設計士/吉田芳人

 

 この長屋門は、用途としては右側がお茶の生産加工場で、石臼で抹茶を作っていたそうです。そして左側は米蔵。2階は後から改修したと思いますが、和装教室で、奥は収納部屋にしていたそうです。2階を作るために梁を切ったり、構造を変えて組みなおしたりという特殊性が見られます。また、茅葺だった時は葺厚が45cmくらいはあるので、2階の小壁は覆い被さって見えなかったのではないでしょうか。
 特徴ある長屋門が山門として再建され、これは城端という地に与えられた立派な建物だと思います。

■手仕事フォーラム代表/久野恵一

 

 この長屋門では、腰板に杉、松、檜、欅などいろいろな材料を組み合わせ、床の朝鮮張りを外壁に利用するなど面白い試みをしました。板の木目は、日差しを受けて長い時間でそれぞれの美しさがより増してくるはずです。
 見ての通り四隅の屋根の跳ね上げが全体を引き締しめて美しく堂々とした長屋門となりました。伝統に培われ、生活に根ざしているものをどうにか残していきたい。これは建造物も同じです。地域に根ざし、この地に住んでいる方々がどう活用するか。それによって地域文化がより定着するはず。ここがそのような場になることを望んでいます。

 

現代手仕事優品展

不二門の2階は展示をはじめとする多目的な空間になっていて、今回は大福寺所有の品を中心にした現代の手仕事を集めた展覧会を開催しました。
 2階は、長屋門時代の改修の跡を反映した複雑な梁があらわに見えていて、壁面は漆喰と杉皮紙で構成され、新たに設けられた明り取りの窓がアクセントになっています。その調和のとれた美しい空間に、建物と手仕事の品々が独特の光の中で神秘的ともいえる美しい空気をかもし出していました。