フォーラムのフォーラム

鳥取・願正寺手仕事フォーラム

9月9日(金)〜12日(月)の4日間、鳥取市青谷町山根の願正寺で「鳥取・願正寺手仕事フォーラム」開かれました。幸い、会期中は台風一過の晴天に恵まれて、多くの参加者と想像以上の成果を残して無事終了しました。

■会場/願正寺

 高林山願正寺は浄土真宗本願寺派の古刹。鐘楼門と本堂の石州瓦が印象的な美しいお寺です。昭和24年の夏、民芸運動の創始者柳宗悦氏が滞在。そのときの取材を基に『妙好人因幡の源左』を著しました。 現住職の衣笠告也さんは第16世で、手仕事フォーラムのメンバーです。

願正寺のある青谷町は、日本海に面した美しい海岸と、その背後に続く山々と山間の里で構成されています。山根は日置川に沿った三方を山で囲まれた山里。刈り入れ直前の稲が台風で倒れていて痛々しい風景でしたが、それでも、山と稲田と、石州瓦のお寺や民家がとても美しい山の里でした。



■公開シンポジウム/9月9日(金)


ゲスト:結城登美雄さん、中川原信一さん

シンポジウムは、民俗研究家の結城さんを囲む平座の形で行われ、司会の岡崎典子さんが進行役を務めました。また、結城さんの隣では、あけびづる細工の名手、秋田の中川原さんが篭編みの製作実演を行いました。

住職衣笠さんのあいさつのあと、三男の衣笠広大君(小学5年)が自作の作文「未来に残すもの」を朗読。この題をテーマに据えてシンポジウムを進めたのですが、結城さんは、「未来に残す」のは大人の責務ではないか、と問いかけます。

篭を編み続ける中川原さんは、山にあけびづるはあるのだが、山に人の手が入らなくなって篭に適したつるを探しにくくなった、と語ります。美しい手仕事は自然と人の関わりから生れるという実感が、リズミカルに篭を編み上げてゆく中川原さんの仕事からも伝わってきました。同時に、自然と人の関わりが景観を生み出し、美しい景観が美しい手仕事を守る……この確信を、シンポジウムの参加者は山根の美しい風景の中で手にしたのではないでしょうか。

中川原さんが篭編みの手を休めて「掛け歌」を披露。自慢の喉からは、仕事の喜びが率直に伝わってきて、一堂感激のひとときでもありました。

■「里山の夕べ」フルート・コンサート

9月9日(金)16:30〜17:30
演奏 小出信也さん(フルート)・浜中雪絵さん氏(ピアノ)

浄土真宗の本堂にピアノが据えられ、小出さんの14金フルートが光ります。ピアノ伴奏は鳥取県出身の浜中さん。小出さんの軽妙洒脱な解説付きで演奏された曲目は、「庭の千草、ナイチンゲール、小さい秋見つけた、赤とんぼ、マドリガル、七つの子、ロングロングアゴー、サンタルチア、中国地方の子守歌、タイスの瞑想曲、小川のほとり」。本堂に広がるフルートの柔らかな音色が心地よく、その音色は開け放された戸口から山根の風景へと流れてゆきました。

小出さんは前日の8日も、鳥取市内「野の花診療所」のレストラン「ターラ」でコンサートを開きました。突然の企画でしたが、会場を埋め尽くした徳永進院長はじめ、診療所の患者さんやスタッフへの素敵なプレゼントになりました。


■陶工製作競演会/9月10日

若い名工、坂本章さんの河原町中井窯を借り、全国から陶工を招いて製作競演会を開きました(手仕事フォーラムメンバーの勉強会でしたので、公開ではありません)。

陶工は、窯元の坂本さん、ベテラン陶工として小鹿田の柳瀬朝夫さん、小石原・太田哲三さん、龍門司・川原史郎さん、湯町・福間 しゅう(※「王」偏に「秀」)士さん、そして温泉津の森山雅夫さんと豪華です。さらに、小鹿田の若手坂本浩二さんと黒木昌伸さんが参加。

陶工たちの見事な技に参加者全員が圧倒されましたが、とりわけ若手陶工がベテランの技を見つめる時の眼差しが印象的でした。

※コンピュータでは表記できない文字

■そば会

9月11日(日)11:30〜
そば打ち 「達磨」高橋邦弘さん

高橋さんは、広島県豊平の「達磨・雪花山房」を根城に、お弟子さんと必要な材料と道具を一台のワゴン車に詰め込んで、自らの運転で全国を回っています。

当日は早朝から準備が始まり、8時過ぎからそば打ち開始。11時半から5時過ぎまでの合計3回のそば会、のべ150人分のそばを、休む間もなく高橋さんが打ち続けました。そばの味は言うまでもなく、その仕事ぶりが軽快迅速、正確無比。見ていて圧倒されてしまいます。

地元「日置桜」の蔵元、山根酒造社長さんがこの日のそばのために厳選、提供して下さったお酒と、日本一のそばが爽やかに喉を通ってゆきました。


■全国手仕事優品展

9月9日(金)〜12日(月)

鳥取の手仕事を含めた全国の優れた手仕事を本堂の一角に展示しました。お寺の本堂に並べられた日常の器たちは、その美しさに違和感もなく、しかも、大きな空間にも堂々としていて、本物の手仕事の力強さと存在感を感じさせてくれました。

手仕事フォーラム 大橋正芳