少し前までは、あたりまえのようにして私たちの暮らしの中で活躍していた自然素材の篭や笊が、今はプラスチックケースやナイロン袋などに取って代わられ、敢えて求めなければなかなか手にすることが出来なくなってしまいました。あたりまえにあったものが見られなくなるという事は、足元が揺らいでいるかのような不安な感覚を起こさせます。しかし、この展覧会を通して、地域によって様々な種類の健康な編組品が今も作られていること、そしてそれを励まし支える活動のあることがわかり、希望をもつことができました。私たちは、現在の暮らしの中でこそ、無表情なものではなく、表情があって使うほどにより美しくなるものを使いたいと思います。日常の生活に、愛着の湧く手仕事の道具を取り入れる事で、心がまるく穏やかになり、楽しくイキイキと安心して暮らしていけるのではないでしょうか。
手仕事フォーラム 加藤直子 |