茨城真壁・竹細工 訪問地:茨城県真壁地区 2005.1.8

少し前まで、真壁周辺は竹細工の産地という訳ではなかったのですが、集落には数件ずつ、農業の傍ら竹細工に従事する人たちがいました。近隣の住民の為に農具や、その他実用品を作っていたのでしょう。おそらく真壁と同様に、日本国中どこでもそういった人たちは多数いたに違いありません。しかし、時代が進むにつれ、竹製品の需要が少なくなっていくと竹細工に従事する人も合わせて少なくなり、この周辺でも今ではほとんどいなくなってしまいました。

この辺では、以前より真竹を材料とした主に大物竹製品を作っていました。米上げ笊(ざる)やどじょうすくいなどです。しかし今回の調査の結果、ここで製作しているものはそういった大物ではなく、そば笊でした。

そば笊のような小物は本来、笹竹などの細い種類の竹を使います。その方が細いので、粘性が強く、小物を編むのに向いているからです。逆に真竹は太いので、硬くて粘りがありません。しかし、この職人はその真竹でそば笊を作ってしまいます。腕がとても良いからこそ為せるわざなのですが、実は、この周辺では昔からうどんがよく食べられていましたので、そのうどん用の笊を作っていたことも多少関係しているのでしょう。

近年になると、近くのそば屋からそば笊の注文が入るようになり、作り始めたそうです(昔はそば粉を使った料理と言えば“そば”ではなく“だんご”だったそうです)。

手仕事フォーラムの一環で行なってきた「そば会」の高橋名人から、新しくそば笊の注文がこの職人のところに入りました。高橋氏は、現在は笹竹で出来たそば笊を主に使っているそうですが、この真竹を使ったものがとても気に入り、今回の注文に至ったのでした。水切れが良く、硬い竹なので作りがしかっりと耐久性に優れ、具合が良かったそうです。今までにも、高橋氏のお弟子さんが新しくお店を開く際にはそば笊の注文がありました。もちろん氏の勧めで……少し話しがそれました。

この職人は非常に腕が良く、その時代のニーズに合わせた仕事が出来る器用さ、柔軟性を持ちえたからこそ、今までこの仕事を続けることができたのです。それができなかったか、あるいはその必要もなかった職人たちは、少しずつ竹細工の仕事から離れ、そして現在のこの状況に至ったのです。

最後にこの職人の言葉です。
「製品の出来の良し悪しは、ひごを作る(竹を細く裂いてゆき、材料を用意する)ことで8割り、編むことで2割り、それで決まる」

竹細工と言えば、どうしても編む工程に目がいきがちですが、いかに均等な細さに手早くひごを作ることができるかが重要で、そこでものの良し悪し、その職人の良し悪しも決まります。

 

手仕事フォーラム 鈴木修司

 


そば笊

どじょうすくい

材料

使い込まれた籠