磨き土器 訪問地:栃木県真岡市 2005.1.15

「磨き土器」という何やら太古の香りがする響きに惹かれて、やってきたのは茨城県筑波山麓。お会いした磨き土器職人・横田安さんは、この道早や50年。自ら瓦を積んで作った窯も、使い続けて30年になるそうです。

庭先には昔懐かしの丸ポストやら、モヤイ像など不思議な物体が置かれています。昔は水甕や植木鉢など日常の道具が主流でしたが、現在は注文によって様々なものを作っています。

陶土は、鉄分が多い自分の田んぼの土を使い、型やろくろで形作ったものを、まだ陶土に水分が残っているうちに竹べらなどで磨いていきます。

今、製造の主流になっている黒の磨き土器は、鉛筆の芯と同様の顔料と松煙を、薄い粘土に混ぜて焼成し、その後雲母で磨くことで、美しい黒光りする土器に仕上げています。通常は800℃くらいで焼くと酸化して茶色の素焼きの土器になりますが、この黒を出すには、1000℃で屋根の瓦と同じ銀色になるまで焼き、30分ほどおいて800℃くらいに冷まし強還元をかけて、燻し焼きのような状態にします。

70歳を超えた横田さんがひとりで作り続けている、無口だけど存在感のある人のような印象のこれらの磨き土器、新たな日常道具のひとつに加えたいですね。

手仕事フォーラム 鈴木修司