益子木村三郎窯を訪ねて 訪問地:栃木県益子 2005.6.21

木村三郎さんの轆轤(ロクロ)さばき

 

益子に木村三郎さんの窯を訪ね、益子の焼き物、益子の現状についていろいろとお話を伺いました。お話のあと、益子随一の轆轤名手の手さばきを実際に見せて頂こうと思い、急須や土瓶の轆轤ひきをお願いしました。そうすると何の気負いもなく、軽く「いいですよ」と応えてくれました。

轆轤台の前に座るやいなや、何の説明もなく、ごく当たり前に「いつもの仕事そのまま」という感じで作業が始まります。轆轤台の土を軽くこねて、水桶の水で手を湿らせ、“すうー”と土を立ち上げていきます。そして両手をそれぞれ内側、外側に添え、急須本体の元となるふくらみを作ります。次にカギ型のこてをその内側に押し当て、外側に添えた手というか指でみるみるうちに急須の形を作り上げていきます。そこからがとてつもなく早いのですが、まさに“魔法の手”のごとく、蓋が、持ち手が、注ぎ口が、まばたきをする間もないほどに次々に出来上がっていきます。

蓋を作るときに手の陰で見えない瞬間があったのですが、その瞬間に蓋の形が出来あがっていました。どうやってその形になったのか、何が何だか分かりません。寸法を計るわけでもないのですが、本体に合わせてみるとぴったりとはまります。まったくの勘だそうです。

体に仕事が染み付いている、体がすべてを覚えている、そんな感じでした。急須一個作り上げるまでに2分も掛かっていません。まとまった数を作る場合は部分部分を作るので、もっと短い時間で効率良く出来るのでしょう。淡々と静かな轆轤さばきでしたが、その裏側に見え隠れする長年の仕事とその経験に圧倒されました。

正しい“職人の仕事”を見せて頂けたこと、木村さんに感謝しいたします。とても貴重な体験でした。

 

手仕事フォーラム 鈴木修司

 


本体


完成