南総手仕事調査の一環でこの度訪れたのが、千葉県館山市郊外に工房兼お宅を構える“唐桟織”の斉藤裕司さん。斉藤さんは四代目にあたり、静かな面持ちの中に芯の強さと自信が垣間見られ、一目会っただけで仕事が出来るなと感じさせる雰囲気のある方でした。週末午前中の突然の訪問にも関わらず、とても快く迎え入れてくれました。さすがに作業風景を見ることは出来ませんでしたが、工房内でいろいろと貴重な話をして頂きましたので、今回は斉藤さんの話を中心に報告致します。
唐桟織は斉藤さんの曾祖父にあたる初代斉藤茂吉氏が、明治の初め頃に東京蔵前に設けられた殖産所(今で言う職業訓練所)で伝習し、現在のこの地に技術を持ち帰ったのが始まりです。殖産所には埼玉県川越から“川越唐桟織(川唐)”の職人を招き、各地から集まった人々に伝授されたそうです。 唐桟を伝習した初代は印旛の出身でしたが、あまり体が強い方ではなかったので、気候が温暖で住みよく、妻の生地でもあったここ南総で仕事をやり始めたのがきっかけで今に至っています。 ところで、なんと初代茂吉氏はかの勝海舟と親交があり、そのため、武士層が中心であった殖産所に特別に入ることが出来たのだそうです。したがってこの地方で唐桟織に従事しているのは、もちろんここ斉藤さんのお宅だけなのです。
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