日本六古窯の一つに数えられる信楽では、古くは壺や甕、室町時代になって茶器、その後、火鉢、日用雑器など、大物を中心にあらゆるものが焼かれてきました。火鉢が使われなくなった昭和初期以降は、植木鉢や食器、建築用タイル、そしてタヌキの置物などが中心になったようです。現在、百三十あまりの窯 元が、全国に品物を供給しています。
町を貫く国道沿いも、信楽駅の周辺も、どちらを向いてもタヌキ、タヌキ、タヌキ。
5メートルを超える巨大なものから、てのひらに乗るサイズまで、何百匹もがこっちを向いて整列しています。タヌキの脇に、植木鉢や傘立て、店内には壺や器類、というお店が多いようです。まず訪ねたのは、主に料理店向けの器を扱う窯元でした。
土鍋から酒器まで、数人の作家による作品が所狭しと並べられています。が、残念ながら、手仕事フォーラム的な視点--伝統のよさを残しながら、個性を出しすぎることなく、確かな技術によってつくられた堅牢で美しい品物--で手にとってみたくなるようなものは、ほとんどありませんでした。 |