カルイ 訪問地:宮崎県西臼杵郡高千穂町 2008.6.23

“カルイ”調査の為に、天岩戸伝説で知られる(天岩戸神社がある)宮崎県高千穂町を訪れました。岩戸川渓谷に掛かる橋からの眺めはとても美しく、古来神々が集まった場所としてなるほどなと感じる厳かな印象の地でもありました。

以前より“カルイ”そのものを見る機会が何度かあり、その独特の形状が気にはなっていました。そもそも“カルイ”とは?どんなものなのか説明致します。

写真にあるように、横長堕円形に口が大きく拡がった真竹を材料とした背負い籠のことを指します。この地方に限って特徴的に見られる形状ということで、実際に制作者の自宅へ向かう道すがらにそのカルイを背負ったご老人、また近所の軒下に転がっているものを目にすることが出来ました。この辺りでは何かを“背負う”ことを、“カロウ”と言い、そこから“カルイ”という名に繋がっているわけです。
ところで制作者の飯干さんは、今年で80歳を迎え、この仕事を始めて63年になるそうで、二代目にあたります。終戦時から竹細工のみで生計を立てていたようですが、その当時はまだこの地域にはカルイを製作する人は30名ほどもいたとのことでした。本人曰く、その頃より飯干さんの制作したものは造りの良さが評判で、地元では有名な作り手であったようです。今となっては需要もそれほどあるわけでもないのですが、地元の方々が実際に“担い籠”として使用する為に、または全国の民芸品店などからの注文に応える為に、カルイ専門で仕事を続けられています。ちなみにカルイを制作出来るのは、今ではこの周辺でも飯干さんただ一人となってしまいました。
飯干さんがこの仕事を始めるきっかけは、もちろん先代であるお父様が既にこの仕事に就いていたこともありますが、生まれつきに体があまり強くなかったらしく、他の仕事よりも座り仕事が多いこの仕事が向いているとご自分で考え、早くから没頭していたとのことでした。

工房の入り口

工房内

製作途中のカルイ。
瑞々しい青色の竹が新鮮で美しい。

こちらの大振りの口枠は、“ニカ(二荷)カルイ”と呼ばれるかなり大振りのカルイの部品です。牧草を刈り取る際に使用するものだそうです。通常のものの二倍以上はありました。

連雀と呼ばれるカルイの肩掛け部分にあたるもの。藁で編まれているのですが、カルイを製作するにあたって竹だけではなく藁の細工もこなせなくてはいけません。

実際に現役で使われている“カルイ”。やはり使われている道具は美しいですね・・。

手仕事フォーラム 鈴木修司