南薩摩の風景2 訪問地:鹿児島県竹原地区 2006.8.3

 

 東シナ海に面する吹上浜は日本三大砂丘の一つとして知られています。浜に面して公園・レクリエーション施設が整備され近隣の憩いの場所として利用されています。一方海岸から1km内陸に入るとまったく違った風景が見られます。海岸沿いに広がる松林を抜け、主要道路から枝道に入ると目的の竹原地区があります。稲田から見る林は竹林と照葉樹林が混在し人の手が余り加えられていない里の自然が広がります。田の傍らには稲を守り豊作をもたらす田の神様と呼ばれる石像が奉られ、穏やかな表情から住民は親しみを込めてタノカンサアと呼んでいるそうです。

 地区の中を歩くと道は海に面しているため防風・防砂のため竹林で囲まれ、海側に直接抜ける道はなく三叉路か雁行した道が続きます。まるで緑の迷宮に迷い込んだ不思議な感覚を得ることが出来ます。道の両側には高さ2m位の竹の垣根を設け、竹林が道に越えて出ないような配慮がなされています。家々にとっては竹林が道からの程よい目隠しであり境界表示の役割をしています。また家の東側(海と反対側)は日照を得るために綺麗に刈り込まれた竹垣が見られ、自然の利と人工的な工夫を巧妙に組み合わせて生活している住民の知恵が感じられます。

 ここ数日感じていたのですが、九州は個々の家の造りよりも外回りの石垣や生垣が整備された家が多く、石の国としての印象が強くなりました。道を歩いていても石垣塀は当たり前で石の蔵を何棟か見ることが出来ました。北国で雪に対する対応と同様に風に対する対応が家造りの基本となっていることが分かりました。

 

手仕事フォーラム 吉田芳人