久野さんの話では、箕の形状は青森県岩木山から鹿児島のこの地方まで、ほぼ同じ形状だそうです。おそらく京都周辺の箕が始まりで、北や南に広く日本各地へ伝播していったのではないか、元を辿ると朝鮮から伝わったのではないか……とのこと。しかし材料は地方それぞれで違いがあり、青森では竹の代わりに主に樹が、宮城まで下がると鹿児島と同様に、種類は様々ですが竹も使用されます。また各地の箕には地域性があり、生産地の北限は青森、南限は鹿児島ですが、奄美以南(沖縄を含めて)はバラ(丸バラ)と言うザルを使用し、箕は使用されないとのことです。また中国地方でも箕はあまり見られず、代わりに板を使うそうです。京都周辺よりどうのような経路で箕が伝わったのか、興味深い問題です。
ところで、軒先に狸の毛皮が内側を表にして吊るされていましたが、こうしておくとカラスが怖がって近寄らないのだそうです。こういった風習を目の当たりにして少し驚き、今も残っている各地の習わしを知ることができて、実際に現地を見て廻る調査は貴重だと、改めて感じました。
最後に、「あんたが日本の宝ですよ」と久野さんがご主人を褒め称えると、本当に嬉しそうに「ありがとう、ありがとう」と喜んでいました。その笑顔がとても印象的で頭の中に今も残っています。こういった方々を探し出し、貴重な技術や文化を正しく次に繋げていくことが、まさに手仕事フォーラムの目指すところです。
手仕事フォーラム 鈴木修司 |