芭蕉布 訪問地:沖縄県今帰仁村 2004.2.10

 私にとって沖縄は25年ぶりの訪問になるでしょうか。ところが、空港を出てその寒さにびっくり。薄手しか用意してこなかったことを反省しつつ、モノレールに乗り込みました。
 今回の沖縄調査は、織物をやっている私にとって、大きな楽しみの一つに芭蕉布の工房訪問がありました。芭蕉布は、織物を手がけている者でなくてもいつかは着てみたい、手にしてみたい憧れの織物。その芭蕉の糸作りに、実は一度挑戦したことがあるのです。お友達に芭蕉の茎を頂いて、灰汁で何時間か煮て、中の繊維を取って……それは糸とはとても言えないものでしたが、それでもその繊維は光沢があり、とても美しいものでした。しかし、お世辞にも滑らかとは言えない芭蕉の繊維をどうやって布にするのだろう?という疑問がずっと私の中に残り続けました。
 調査3日目に芭蕉布工房を訪問する時がやってきました。初日、2日目と雨で寒かった空とは異なり、雲間から太陽の光がこぼれ、海にその光が差し込み、これぞ沖縄!と感激。朝一番で寒緋桜を見に八重岳へ。まだ人通りも少ない道を上り、山の上の休憩所で朝食をとり(ミート卵サンド。おいしかった!)、それからいよいよ工房へ。

 今帰仁村にある工房へ入ると、ちょうど糸の“巻取り”をしているところでした。クシで丁寧に解かしながら糸に蝋を塗る……蝋燭を横にして、巻き取る芭蕉の糸に蝋を擦り付けていたのです。「なるほど……」。これで滑りも良くなりクシ通りもスムーズになるわけです。私の疑問が解けました。
 工房には経糸が掛かった織りかけの機があり、工房裏の畑には、芭蕉の葉っぱが大きく茂っていました。しかし、今は糸作りも半分にしているとか……なかなか売れないからだそうです。それでも、糸を作っている人に仕事をして頂くために、精いっぱい頑張っているそうです。全ての工程のお話を伺えたわけではありませんが、一つ一つが経験と鍛錬を必要とする実に大変な作業だと感じました。こうした仕事を続けるために、様々な生活の仕事が簡単になった今、私には想像もできないような苦労があったことと思います。私自身ももっと勉強して、この生きた手仕事について、その意味や歴史などを含めて少しでも多くのことを伝えていきたいと強く感じました。


手仕事フォーラム 横山てる美