照屋窯 訪問地:沖縄県恩納村 2004.2.10

 読谷村のやちむんの里から少し離れ、東シナ海を一望できる丘陵地にその窯はある。未舗装の道路、案内看板があるわけでもない。むしろ、外からの侵入を阻む様に登り窯は築かれている。近ごろは観光化された窯場が多くなり、作られる焼物にも微妙にその影響が出始めているように思える。しかし、この照屋窯にはそのような迷いや邪心など全く感じられない。

  5年前、私はこの窯の二彩点打湯呑と出会い、作り手と逢う日を夢見てきた。大げさに思われるかも知れないが、それほど力強く、存在感を感じさせる作品であった。
今年二月、念願叶い窯出しに立ち合う機会に恵まれた。生憎の雨の中、窯から出されたやちむんたちは無造作に土の上に置かれ、雨に打たれていた。こんな荒っぽい窯出しにも照屋さんの人柄がうかがえる。気負わず、威張らず、ありのままの温かさが作品にも顕れている。 他の作り手と何が違うと聞かれても、技法や焼成法が他の製作者とそれほど違うとは思えない。ただ「土から生まれ土に還る」焼物も人も同じである。そんな作り手のメッセージが伝わる。沖縄にはまだこんなすばらしい作り手がいるのだ。


手仕事フォーラム 横山てる美