曲げわっぱ 柴田慶信商店 訪問地:秋田県大館市 2006.6.9

 北東北手仕事調査一日目、朝一番の秋田行き飛行機で秋田入りし、最初にまず訪れたのが大館の曲げわっぱ”柴田慶信商店”。
 工房を訪れると作業中の柴田さんがいらっしゃり、事務所にすぐに案内してくれました。柴田さんはかなりお話好きのようで、話し出すと止まりません。曲げわっぱについて熱く語り出し、世界各地、日本各地の曲げわっぱコレクションを次々に見せてくれました。
 それらコレクションはヨーロッパ各地(ドイツ、スウェーデン、フィンランドなど)、アフリカ、中国、ベトナム、オーストリア、そして日本のもの、様々な用途のものがありました。どれもこれも、ご自身の仕事の参考にと、また後世のための資料として、長年努力を惜しまず集められたそうです。非常に貴重なコレクションで、柴田さんの曲げわっぱに対しての情熱が伺い知れます。


<柴田さんとコレクション>

ドイツ製のバター入れ。美しい楕円型で、
全体のバランスがとても良いものです。

フィンランドの曲げわっぱ。
フィンランドならではのシンプルデザインです。

アイヌ独特の柄が施されています。

日本の漆が塗られた曲げわっぱです。
裏側にフックが付いていたので、腰布か、
ベルトに差して、携帯用もの入れとして
使われたのでしょう。

七個の入れ子になった曲げわっぱの鉢(キリダメ)。
“一家に七人の神がいる”という意味が含まれているそうです。

柴田さんが古いものを参考にし、再現したもの。

龕灯。忠臣蔵の討ち入りが想い出されます。
これも曲げわっぱで出来ていたのかと、驚きです。

曲げわっぱの巻き尺。龕灯同様に驚きです。

 他の地域では、ヒノキ、ヒバなどが曲げわっぱの原材料として使われることが多いのですが、この地方では何といっても秋田杉のものが有名です。しかし近年、秋田杉を手に入れること自体が、この近辺ですら非常に困難になっているようです。素人目に見ても、秋田杉の色、木目の美しさは格別であり、残念なことです。作り手にとっては、尚更残念でしょう。柴田さんはこの材に特別な思い入れがあり、これからも出来る限りに秋田杉にこだわり続けていくとのことでした。

 柴田さんの曲げわっぱの魅力は、秋田杉の美しさを存分に引き出し、造りの良さにあります。長年の経験により得た技術は確かなもので、製作に掛ける強い想いがものにも表れています。そして研究熱心な姿勢が、とても印象的でした。これからも期待出来そうです。

手仕事フォーラム 鈴木修司


接合部は桜の皮。この部分の意匠も素晴らしい。