山形県あけび蔓細工 訪問地:山形県鶴岡市郊外 2007.7.18

 
 先日東北手仕事調査の一環で、山形県鶴岡市郊外のアケビ蔓細工の製作者を訪ねました。新潟との県境に程近いところで、日本海がすぐ下に臨める海岸沿いの高台にあるお宅でした。そしてすぐ裏は山で、材料となるアケビ蔓もその裏山で取れるとのことでした(県をまたぎ新潟まで採りにいくこともあるそうですが)。製作者である本間さんは、もとは東京でお仕事をされていましたが、退職を機に郷里であるこの地へ戻ってきました。そしてその頃に趣味程度でアケビ蔓細工を始められたそうですが、めきめきと腕が上達して、いまでは工芸店に製作物を卸すまでになっています。
 以前この辺では他にもアケビ蔓細工製作者が何人かいたらしいのですが、いまでは本間さんが作るだけとなっています。どこの手仕事の現場もそうですが(特に編組品に関しては顕著に)、年々減っていくのが現状です。主な理由としては製作者の高齢化、そして作っても売れない(需要不足)、コスト面で割が合わないことなどです。 この地方のアケビ蔓細工の用途としては前述の通りに海岸沿いの集落であるので、磯テゴといった腰に付けて磯で採取したものを入れる為のカゴや、農作業用の道具が主でした。
 しかしそういったものを使用する人はいまではほとんどいないので、この仕事も廃れていき、本間さんの作るものもそういったものではなく、買い物カゴや自宅で使う収納用バスケットなど洋的なものが大半です(藤細工や竹細工などの編み方を参考にしているようで、参考資料も見せて頂きました。それが“趣味の藤細工“的な本を参考資料としていたので、少し驚きでした)。

磯テゴの古いもの

 また本間さんは材料もご自分で採りにいきます。ちょうど伺ったころより少し後の9月頃が収穫期として良いのですが、去年採り溜めていた材料が作業場に所狭しと積まれていました。これでは当分の間、材料には困らないでしょう。ご本人のやる気が伝わってきます。
 ご本人曰く、趣味で初めたものなので、注文されたものではなかなか手が進まない。自分が作りたいものを中心に仕事をしていきたい、とのことでした。余暇の楽しみとして仕事をされているのだなというのが伝わってきます。最近では畑仕事(自家菜園)が忙しいらしく、そちらのほうが楽しく、なかなかこちらには手がまわらないとも話していました。ということで注文されることを嫌い、頼まれても作れるかどうか……いつになるか分かりません……と消極的な返事が返ってくるだけでした。 しかし、本間さんの製作に関することや、アケビ蔓細工のことなどをいろいろと話していくうちに、本間さんへのこちらの熱い想いと期待を感じ取って頂け、ご自分の腕が必要とされていることを嬉しく感じ“励みになります”“じゃあ作ってみましょうか”“何を作ればいいですか”と最終的にはやる気を見せてくれ、快諾を頂けたのでした。新しいものを含めて注文を何点かして、お互いに気持ちよくお別れとなりました。

手仕事フォーラム 鈴木修司

 
これらを元に変更を加え、新作の注文を致しました。注文が仕上がってくるのが、いまから楽しみです。

アケビ蔓細工の道具

切り揃えられたアケビ蔓

製作者の本間さん

寸法が床にマジックで書かれています。

お庭に蔓細工の材料である三つ葉アケビが生えていました。