伊賀青土瓶 その後 訪問地:三重県阿山郡阿山町丸柱 2009.5.22

 2004年6月に「伊賀丸柱青土瓶」の調査レポートが書かれています。手仕事フォーラムとして初めの伊賀丸柱調査で、つくられなくなったと思われていた伝統の土瓶が再現されているのを発見、新作として製品化にとりかかった、との内容でした。

 この時、偶然尋ねた工房で出会った「30代の男性」が、やまほん陶房の山本忠正さん。現在36歳、代々続く土鍋づくりの「職人」の顔と、ティースプーンなど現代風の食器づくりで人気の「作家」としての顔を持っています。研究熱心な山本さんは、倉庫で埃をかぶっていた古いものを出してきては、製品 づくりのヒントにしていて、青土瓶の試作もそんな試みの一つでした。

最初の出会い以来足かけ5年。この間、手仕事フォーラム代表の久野恵一さんが度々足を運び、アドバイスを重ねました。型にはめて量産するのが一般的な土瓶ですが、山本さんはすべてロクロによる手仕事で成形するため、微妙に違ったかたちができあがります。いくつかの試作品から一番よいものを選び、さ らに改良点を話し合い、試作.....を繰り返しました。土瓶全体の大きさや形、注ぎ口の長さ、幅、取り付けの位置、角度、注ぎやすさ。改良のポイントは細部にわたりました。
そしてこの春、現代の生活にも取り入れられる新作の土瓶として完成したのです。
火にかけられる煎じ土瓶の機能はそのままに、大きさは、大家族で使った昔のものの半分ほどに縮小。底にかけてのふくらみを、ややすぼめる感じにしたことで、見た目も軽やかに洗練されました。色は、伝統の青(明るい青緑色)と飴の2色。今後に向けて、伊賀の白い土色を生かしたものも検討してもらって います。

担い手(プロデューサー)の関わりでつくり手の挑戦が汲みあげられ、販路が開かれ、新たな伊賀丸柱の歴史が始まりました。

 

(手仕事フォーラム賛助会員 大部優美)