Kuno×Kunoの手仕事良品 |
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#006[白木のパン皿] 富山県南砺市 | ||||
私自身が木工品を推薦する場合、好みもあるが、だいたいが拭き漆(うるし)をほどこした物となる。これは木地面に生漆を薄く塗りつけて、布で拭き取りながら丹念に磨いていく手法だ。世間一般の傾向として最近は北欧の仕事に影響されたのか、塗料を塗っていない白木(しらき)の木工品がかなり出回っているようだが、湿度の高い日本ではカビが発生しやすいし、長い使用に耐えられるようにするためには、漆を塗って保護するのが常道なのである。
ところが2年ほど前、この考えを修正せざるを得ない物に出合った。民藝運動の創始者、柳宗悦(やなぎむねよし)の直弟子であり、倉敷の民藝館を創設された外村吉之助(とのむらきちのすけ)さんのご次男の奥さんと懇意にしていて、その方のお宅を訪れた時のこと。彼女がクッキーを載せて出してくれた、白木の使い込んだ皿に一目で惹かれてしまったのだ。祖父の吉之介さんが泊まりに来た際にこれでパンを出したら、手を叩いて喜んでくれたという。そして「日本の物ではないな。どこの国の物だ? どうして君の家にあるんだ?」と尋ねられたそうだ。 この木皿は1960年頃にご主人の転勤先である広島で、パン屋の「アンデルセン」が買い物のポイントを貯めると景品としてプレゼントしていた物。白木のため、最初、彼女も抵抗を感じたけれど、毎日のように朝食のテーブルに並べ、バターの油が自然と染み込んだり、使用後にお湯でていねいに汚れを拭き取っているうちに、味わい深い色合いになったのだという。
では、誰にパン皿を製作してもらおうかと思案していたら、一人の木地屋を思い起こした。2001年頃に知り合った富山県南砺市(なんとし)で「わたなべ木工所」を営む渡辺章治(しょうじ)さん(56歳)だ。南砺市に隣接する庄川は挽物(ひきもの)木地の生産が盛んで、木地屋の多い地域。そうした木地屋で構成される庄川木工協同組合もあり、渡辺さんも属していた。しかし、現実は木地師の仕事だけで生活していくのがとても難しい。渡辺さんの家も先代から木地屋だったが、この仕事だけでは将来食えないと、若い時に独自で漆の勉強をした。木地づくりに加えて漆を塗る仕事もこなせるために、生計を立てるのに役立つである。
白木のパン皿は手仕事フォーラムが打ち出す新たな提案である。今回はケヤキという良い材だったが、大工、建具職人、家具職人が現場で切り落とす木っ端をくべて灰にするだけではなく、他に活かす手段があるということ。そして、節があるような材でも使い込むことで暮らしの良品に転化できること。さらには、漆と白木の物は暮らしの中で使い分けられるし、伝統に固執することなく、取り入れ方はいろいろあることをみなさんに伝えたい。 (語り手/久野恵一、聞き手/久野康宏、写真/大橋正芳) | ||||
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