Kuno×Kunoの手仕事良品

昔の物 今の物(23)2008.05.13

 高さ20センチから30センチの壺をご紹介します。いずれも昔の物です。今の物との比較ができれば良いのですが、生活スタイルの変化により、壺類は、現代の実用から外れてしまいました。現代のこの種の壺の用途は、花器か、または飾り壺と言うことになり、その比較をすることに無理があると思われます(但し、現代の壺にも素晴らしい物も有ることを否定しているわけではありません)。

 この大きさの壺は、種、茶葉、味噌等を保存する容器として、日常生活に無くてはならない物だったのでしょう。そのため、どの窯場でも作られていました。大量に作られ、消費されてきただけに、工人の手慣れた仕事が窺え、まさに無意識の美が見て取れます。また、それぞれの窯場の特徴が現れて、興味が尽きません。

 以下に日本を南から上って、幾つかの壺をご紹介します。

龍門司の壺です。この窯の特徴である美しい白土を全身にまとい、その上に緑と飴を無造作に流し、これまた釉薬を掛ける時の手跡もそのままに、この世に生み出された壺です。まさに、無意識、大量生産が作り出した美がここにあります。

小袋の種壺です。この窯場の特徴的な形をしています。この窯の作品には、焼の甘い作品も多く見られます。窯焚きの荒々しさを感じると共に、出来上がった作品にも多種多様の変化をもたらし、作品ごとの面白さを作り出します。この壺も窯の火前と後ろで釉薬の融け具合が異なり、いわゆる片身変わりとなっています。

唐津弓野の壺(甕)です。松の絵の大型の壺はよく見かけますが、小型の壺で、かつ岩絵の物はあまり見かけません。この種の壺の制作初期は、いろいろな絵柄があったものが、生産効率、需要等から、徐々に松の絵に一本化されて行ったのかも知れません。そう考えると、この壺は、松の絵より古い物とも言えそうです。

高田の壺です。種壺でしょうか。李朝の影響が窺えます。少し上手の壺で、白土を埋めて象嵌し、透明釉薬を掛けただけの壺ですが、どこか貴賓があります。

丹波の壺です。いわゆる赤土部を全体に掛けた上に、黒釉薬を打掛けています。丹波の釉薬の美しさと偶然に降り注いだ灰による景色がこの壺を引き立てています。

甲府近在の小倉(こごえ)焼と言う地方民窯の壺です。地元の材料を使い、無造作に緑釉薬を打ち掛けただけの壺ですが、それが味わいとなっています。

成島の味噌壺です。なんの変哲も無い切立型の壺ですが、なぜか魅力を感じます。この不思議な感じを言葉で表すことが出来ません。釉薬、縦横のバランス、胴ひもの存在、位置等々色々考えても答えは出ません。これが安定した美しさと言うものなのでしょうか。

 

手仕事フォーラム 横山正夫