Kuno×Kunoの手仕事良品

昔の物 今の物(30) 2009.02.21

酒上(ひあげ)をご紹介します。

いずれも昔の物です。

「ひあげ」とは、酒等の液体を注ぐ容器とでも定義すればよいのでしょうか。漢字では「酒上」と書いて「ひあげ」と読ませます。陶磁器で言えば大片口と用途は同じです。しかし、陶磁器より軽く、繊細であるため、祝いの席等、大人数の宴席で、酒を振る舞うために使用されたのではないかと思われます。そもため、その意匠も華やいだ雰囲気があります。

まずご紹介する酒上は朱漆の物です。

この酒上は直径九寸(約27センチ)もある大型の酒上ですが、その形の美しさ、年月を経た朱漆の色合い、どこから見ても文句の付けようのない美しさです。輪島系統の産でしょうか。

次にご紹介するのは、浄法寺の物です。浄法寺は、昔も今も生活に密着した漆器を生産する貴重な産地です。この産地の物は、上記の朱漆の酒上に比べ、粗野な印象がありますが、素朴な暖かみと漆塗りの原点を思わせる塗りで、また違った魅力があります。

生活スタイルが変わり、大人数での宴で酒を回し飲む事など、まずなくなりました。そして、そもそも自宅での宴会がなくなり、各家にこの様な酒上を置いておく必要もなくなりました。現代も酒上は作られていますが、実用を離れた物にはやはり、どこか弱々しく、ご紹介した昔の物のような力強さや可憐さは出てきません。残念ですが、これが現実です。

 

手仕事フォーラム 横山正夫