プレス掲載

2004年3月10日発行 デザインテーブルウェア掲載

いまだから再発見 古くて新しい「伝統」の魅力

いま日本古来の伝統の器が再発見されている。
各地に残る庶民の窯から生まれた器は今見てもモダンであるし、有田焼ではリサイクルという手法をとって新しいかたちが生まれている。
伝統は決して留まっているのではなく、日々歩み続けているのだ。

温かくてモダンな「民藝」のうつわ民藝の器といえば、堅苦しく聞こえてしまうかもしれないが、ここ鎌倉にある「もやい工藝」の器は少しもかしこまることなく、親しみにあふれた顔をしている。そのどれもが土の温かさを持ちながらも、不思議と泥臭さは無く、むしろモダンな佇まいで、毎日の食卓の上にもすんなりと馴染んでしまいそう。「民窯と呼ばれる庶民の雑器を焼く窯元を訪ね歩き、数十年の信頼関係からここに置かせて頂いたり、オリジナルを焼いてもらっています。これらの一番の魅力はそれぞれの窯元が持つ数百年の伝統美はもちろん、人間の手を通してつくられた温かさだと思います。昨今はシンプルで無機質なものが主流ですが、こうした温かみにホッとするのか、若いお客様も多いですよ」とオーナーの久野麗子さん。

 価格帯も手に入れやすいようにと数百円から数千円のものが中心。一点、一点丁寧に焼かれた器が少しの贅沢で手に届くのがうれしい。「つかうごとに味がでてくるのもいい」という久野さん。お気に入りの器が自分とともに歳をとっていく、こんな愛着の持てる器が生活をきっと豊かにしてくれることだろう。 沖縄の読谷焼の平皿。これら商品には窯名や作家名を記すことなく値札しか貼られていない。先入観を持たず、純粋にものを見てほしいという久野さんの願いから。1800円 独特の青味が特徴の小鹿田焼のおちょこ。大分県日田市の山の中で焼かれたこれらの器は手仕事で生まれた賜物だ。ちょっとしたつまみをいれても似合いそう。750円 沖縄、九州、山陰、瀬戸など日本各地の窯元の作品がずらりと並ぶ、これらは久野さんと、各地の窯元との深い信頼関係を示すものでもある。

 英国の船用のピューター(錫)の食器を原型に、島根の江津焼の窯元で制作。ガラス分を多く含む土ゆえ、光沢が美しい。900円〜 江戸時代につくられていた片口の瀬戸焼を再現。現代には消滅してしまった雑器としての良さを窯元の理解を得て蘇らせた。4500円 大陸の影響を受けた沖縄では独特の絵付けが特徴。大きくは点打ち模様と唐草模様に分けられるがどちらも豪快。6000円(中)、4500円(小) かつて民藝運動の中心的人物として活躍したバーナード・リーチが小鹿田に滞在したときに伝えたリーチ型ピッチャー。9800円